効率的なポストプロ環境の構築
また、コストについても同氏は「SANと違って、クライアントにライセンスが要らないだけでなく、SpaceにGbEのポートが多くありますので、現状は各クライアントからスイッチなどを介さずに直接Spaceに接続しています。そのため、SANでは必要になる高額なFCスイッチどころか、イーサネットスイッチまでもが不要でした。オペレーションも簡単で、各PCで設定して接続するだけですので、管理コストも限りなくゼロです。運用開始してから、ハードウェア的なトラブルもなく、単体だけでなくトータルコストで見ても大変リーズナブルです」という。
加えて、Spaceの導入を振り返り、同氏は「ディレクターさんなどのお客様が持ち込まれるPCを直接接続できるようになり、USBやFireWireのHDDなどを介して受け渡す必要がなくなりました。時々、外部オペレーターさんがお越しになって作業する際にも、PCにインストールされているプラグインの差異などで再作業できない部分が出たりすることがありますが、そういった場面で持ち込みPCとの協調作業も可能となり、お客様には広く喜ばれています。 私たちに至っては、もはや、Spaceのない環境に戻ることは想像すらできません」と締めくくった。
SAN, NAS, DAS それぞれの違い
NAS (ナス、Network Access Storage) は、複数のPCから同時にアクセスできる共有ストレージの一種。いわゆるLANを介して接続する。今回のSpaceでは 1Gbit (125MB/秒) の通信速度を持つ、GbE (ジービーイー、Gigabit Ethernet) を標準で4ポート備え、それらを1束として扱うことで最高4Gbps (500MB/秒) の通信速度に対応。10Gbps (1250MB/秒) の通信速度を持つ10GbE (テンジービーイー) にもオプションで対応。PC内蔵HDDやUSB、FireWireなど、PCに直結されるストレー ジはDAS (ダス、Direct Attached Storage) と呼ばれて区別されている。
映像制作用としてはSAN (サン、Storage Area Network) がハイエンドユースの共有ストレージとして広く普及しているが、この場合は、データ自体は一般的にファイバーチャネル (以下FC) と呼ばれる専用のインターフェースを介して転送される。NASではハードウェア的にはLANケーブルの接続のみで済み、SANでは必要となるメタデータコントローラーというサーバーや、FCスイッチと呼ばれる、電話で言えば交換機にあたるような機器、クライアントPC側の専用のソフトウェアが不要である。
FCに代わりLANで接続できる規格iSCSI (アイスカジー) を利用したIP-SAN (アイピーサン) もあるが、メタデータコントローラーやクライアントPC側の専用のソフトウェアがSAN同様に必要。NASは一般的に、転送方式の通信手順の構造上の違いがボトルネックとなり、SANに比べ、スピードの安定性や俊敏性で不利と言われる。今回のSpaceは、NASでありながら、独自の技術により、映像制作用にこれを最適化。SANに迫る安定したパフォーマンスを持ち、FCインターフェースを増設できないノートPCやコンパクトPCでも、SANに迫るパフォーマンスを享受できるのが特徴。