Reality システムで魅せる映像演出の裏側 - VLS 制作営業部 テクニカルディレクター 越田 弘毅氏

── VLS での役職と、どのようなお仕事をされているのか教えてください。
VLS ではテクニカルディレクターとして、撮影機材、Reality システム、PC やネットワークなど、技術サポート全般を担当しています。
── カメラ、トラッキング、Reality Engine など、スタジオ内で使われている全ての機材について教えてください。
VLS のスタジオ内には国内最大級のグリーンバックが備わっています。スタジオの詳細仕様は以下のとおりです。
- 150 坪のスタジオ内に約 50 坪 ( 幅 : 約 13m ×奥行 : 約 10m ×高さ : 約 6.4m ) のグリーンバックステージ
- ベースライト : ARRI 社 SkyPanel S60c S360c
- 照明コントロール : ETC 社 ColorSource40AV
- カメラ : Blackmagic URSA Mini Pro 4.6K G2
- レンズ : Fujinon ZK19-90 mm
- リアルタイム合成システム : Reality Engine × 1 台 ( 必要に応じて外部から追加可能 )
- 最大 3 カメ体制で撮影
- 利用している Reality のバージョン : 4.27(2023年5月)
- カメラトラッキング : stYpe RedSpy Fiber × 1 台
── VLS では何名のスタッフが Reality を操作されていますか ? またどのような分担で作業をされているのでしょうか ?
テクニカル全般と開発業務を担当する者 1 名と、機材周りとオペレーションの補助を担当する者 1 名の、計 2 名体制で運用しています。
── Reality Engine や Reality Hub を使っていて感じる利点があれば教えてください。
Reality を使用していて特に優れていると感じる点は以下の 3 つです。
- Reality Engine をプレイ ( リアルタイム CG 合成を ON ) した後でも様々なコントロールが容易に行える
- キーイングの品質が非常に優れている
- Reality Hub を使用すると一つの Reality Engine を複数の PC から制御可能 ( 例えば、1 人がキーイングを行い、もう 1 人がイベントの実行を担当するなど、作業を分担することが可能 )
── 他にも便利な機能や活用法があれば教えてください。
主要な機能を実験的に利用しましたが、Billboard 機能は頻繁に実際のプロダクションでも活用しています。カメラがズームインしても品質が落ちない点が素晴らしいですね。
[補足] Billboard 機能 : Reality の 3D ( バーチャル ) 空間内にビデオや静止画表示用のスクリーンを配置する機能。企業イベントなどで登壇者の横や後ろにプレゼン資料 / 中継映像などを映し出す演出で活用される。現実のセットと組み合わせてこの演出を行う場合はセット内に LED ディスプレイを用意する必要があるが、LED の場合はカメラでズームインすると画素が荒く、モアレが出てしまう。Reality の場合は Billboard 機能で元の解像度を保持したまま動画 / 静止画を表示できるため、カメラがズームした場合も画質の荒れを懸念する必要がない。[参考ビデオ]

── お客様から案件についての問い合わせを受けてから、実際にこのスタジオを使うまでの段取りを教えてください。
案件で使用するプロジェクトデータを受け取ってからこちらで準備する事としては、イベントトリガーをこの MIDI コントローラーに割り当てる作業があります。演出イベントの実行自体は Reality オペレーターがするのではなく、制作進行の方が押しやすいよう大きめのボタンに割り当てています。
FlyCam 機能を使ってみたいという要望もよくお客様側から受けるので、実際のカメラの動きからシームレスに遠くに飛ばすなどの仕込みを行うこともありました。
[補足] FlyCam 機能 : 実際のカメラ映像から街の俯瞰ショットや地球へと、徐々にズームアウトする映像演出。日本では “コズミックズーム " とも呼ばれている。Reality は単純なレイヤー合成ではなく、3D 空間上で高度な合成を行えるため、FlyCam ( コズミックズーム ) のような演出にも比較的簡単に対応できるのが特徴だ。[参考ビデオ (冒頭の演出) ]
── お客様が実際にこのスタジオやシステムを体験した際に、どういった点に驚かれていますか ? 実際の反応などがあれば教えてください。
お客様からはキーイングの品質が素晴らしいとよく言われます。人物の前に CG があってそれが入れ替わる“実写と CG" の絡みについては、他のソリューションでは見た事がない、または難しいケースが多いですが、Reality では簡単に実現できるので驚かれるお客様が多いです。
── Zero Density のシステムを導入する前に Unreal Engine を利用したことはありましたか ?Uneral Engine や Reality を習得するまでに苦労したことなどがあれば教えてください。
当社の立ち上げまではほとんど Unreal Engine を触ったことはありませんでした。当初は Unreal Engine とカメラ機材周り、カメラトラッキングシステム stYpe のセットアップ、レンズキャリブレーション、それに加えて Reality Engine を同時に覚えなければならないことがたくさんあったのが大変でした。
── ASK / reinphase / Zero Density から Reality Engine の研修を受けてから、実際に使えるように習得するまでにはどれくらいの学習期間が必要でしたか ?
VLS で最初のプロジェクトが始まるわずか 1 ヶ月前ぐらいにリーンフェイズの片田江さんにトレーニングをしていただいて、そこから研修期間はトータル 2 週間くらいだったと思います。Unreal Engine の知識も全くない中トレーニングを受けて、すぐに初めてのプロジェクトで本番に臨みましたが、非常に大変な経験でした。
最初のトレーニングではとても丁寧に教えてもらうことができたので、当時は本当に助かりました…。
── これまでにどういったウェビナーをご覧になりましたか ? そこで学んだ内容などについて教えてください。
ウェビナーでは、選挙特番で使用するようなアセットが印象に残っています。イベントのボタンを押したらグラフや写真が表示され、その写真の中身を比較的簡単に入れ替えることができる仕組みを見て、このような使い方もできるのだなと学びになりました。
[補足] 現在は、放送用グラフィックやバーチャルセットの制作社向けのオンライン研修用プラットフォームとして Zero Density Academy が提供されている。(ウェブサイト : https://academy.zerodensity.tv/ )
── Zero Density が提供している『 Community Edition 』をダウンロードして、トレーニングや連携作業を行うこともありますか ?
Community Edition は自宅の PC にインストールして、日々勉強させてもらっています。スタジオを立ち上げた当時は Reality のバージョン 4.2.10 で、Community Edition はありませんでした。唯一 Reality を操作できる 1 台だけの PC を、スタッフは交代で触っていました。思うように勉強できる環境がなかったので少し苦労しました。
[補足] Zero Density Reality Community Edition : Unreal Engine ユーザー向けの Reality 学習用無料ライセンス。無料版ソフトウェアでは画面に透かしが表示されるため、実際の収録や配信では運用できないが、有料ライセンスがなくても Reality が持つほとんど全ての機能を試すことができる。(ウェブサイト : https://www.zerodensity.tv/ja/break-free-with-zero-density/ )
── ズバリ、VLS の魅力とは ?
今後当社はモーションキャプチャーとの併用や、DMX を利用した実写と CG 空間のライトの同期、まだ公表はできませんが他にも細かい開発案件を進めており、さまざまな新しい表現を考えています。
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Reality (リアリティ) は、究極のリアルタイムノードベース合成ソフトです。
導入先
- バーチャル・ライン・スタジオ株式会社
- https://vls.co.jp/